実行トレース(lait run --trace-file / lait trace show / lait trace export)
モデル呼び出し・ツール呼び出しを JSONL として記録し、実行軌跡を検査・集計したり OTLP へエクスポートしたりする方法。
lait run --trace-file <PATH> は、そのワークフロー実行が送信した全てのモデル補完リクエストと
ツール呼び出し(MCP・サブエージェント・カスタムシェルツール、tool_policy/--approve-tools に
より拒否されたものも含む)を、<PATH> に JSONL(1行1イベント)として書き出します。--show-usage
がトークン使用量を人間向けに要約するのに対して、--trace-file はワークフローの実行軌跡
(どのステップが・いつ・何回・どのツールを呼び、どのくらい時間がかかったか)を、後から jq などで
機械的に検査したり、lait trace show で一覧表示したりするためのものです。
使い方
$ lait run workflow.yml "プロンプト" --trace-file trace.jsonl
$ lait trace show trace.jsonl
[ 42ms] chat summarize — 14:03:11.204 (gen_ai.request.model=workflow-model lait.source=live gen_ai.usage.input_tokens=120 gen_ai.usage.output_tokens=48)
[ 3ms] execute_tool tool 'tool__ripgrep' — 14:03:11.260 (gen_ai.tool.name=tool__ripgrep lait.tool.round=1 lait.tool.decision=allowed)
<PATH> の親ディレクトリが存在しない場合は自動的に作成されます。ファイルはワークフロー全体の
実行が終わった後に一括で書き出されます(--checkpoint のようにステップごとに追記されるものでは
ありません — 実行がクラッシュ以外の理由で失敗した場合、それまでに記録したイベントは書き出され
ません)。
イベントの形式
各行は1つの JSON オブジェクトで、次のフィールドを持ちます。
| フィールド | 内容 |
|---|---|
seq |
記録順を表す通番(0始まり)。並行実行(parallel/for_each の max_concurrency > 1)されたイベント同士のタイムスタンプ順序が前後することがあるため、読み出し順序はこちらを基準にします。 |
operation |
イベント種別。"chat"(モデル補完リクエスト)・"execute_tool"(MCP・サブエージェント・シェルツールの呼び出し)・"compact"(ツール周回の要約による圧縮が発生した箇所)のいずれか。 |
label |
そのイベントを引き起こしたもの — ワークフローのステップ id、または tool '<修飾済みツール名>'。--show-usage が使うラベルと同じ値です。 |
start / end |
ISO 8601 形式のタイムスタンプ(UTC)。 |
duration_ms |
end - start をミリ秒に丸めたもの。 |
attributes |
イベント種別ごとの追加情報(下記)。 |
attributes のキーは、OpenTelemetry の GenAI Semantic Conventions
(gen_ai.*。2026年現在まだ策定中の規約です)にできるだけ合わせています。これにより、
lait trace export で OpenTelemetry のコレクターへ
送る際も、属性名をそのまま転用できます。lait.* で始まるキーは lait 独自の項目で、GenAI
Semantic Conventions に対応する項目がないものです。
"chat" イベントの attributes
| キー | 内容 |
|---|---|
gen_ai.request.model |
リクエスト先のモデル id。 |
gen_ai.usage.input_tokens / gen_ai.usage.output_tokens |
サーバーが usage を報告した場合のみ設定されます。 |
lait.source |
"live"(実際にネットワークへ送信)/"cache"(--cache のヒット)/"replay"(--replay のヒット)。 |
"execute_tool" イベントの attributes
| キー | 内容 |
|---|---|
gen_ai.tool.name |
修飾済みツール名(mcp__<server>__<tool>/agent__<name>/tool__<name>)。 |
gen_ai.tool.arguments |
モデルが渡した生の JSON 引数文字列。 |
lait.step.label |
そのツール呼び出しを発生させたモデル呼び出し自身のラベル(label フィールドと同じ値 — tool_called アサーションの args_jq はこの値ではなくこちらの引数を評価します)。 |
lait.tool.round |
そのツール呼び出しが何ラウンド目の tool loop で発生したか(1始まり)。 |
lait.tool.decision |
"allowed"/"denied"。tool_policy の deny か --approve-tools での拒否かは区別されません。 |
lait.tool.denial_reason |
"denied" の場合のみ設定される、モデルに返された拒否理由の文字列。 |
"compact" イベントの attributes
| キー | 内容 |
|---|---|
lait.compaction.round |
圧縮が発生したラウンド番号(1始まり)。 |
lait.compaction.messages_before / lait.compaction.messages_after |
圧縮前後のメッセージ件数。 |
圧縮自体が送信する要約用リクエストは、この "compact" イベントとは別に、通常の "chat"
イベントとしても記録されます(ツール周回の要約による圧縮を参照)。
記録されないもの
- span の親子構造は記録されません。 これは意図的な設計です — すべてのイベントは
labelで ワークフローステップやサブエージェント名に紐付いているので、labelでグルーピングすれば 「どのステップが何回モデルを呼び、何回ツールを呼んだか」は再構成できます。呼び出しの入れ子構造 そのもの(サブエージェントがさらに別のサブエージェントを呼ぶ、など)を正確な親子関係として 残したい場合は、現時点ではこの仕組みの対象外です。 - ストリーミング(
--stream)応答のイベントは記録されません。 ワークフローのprompt/agentステップは常に非ストリーミングでモデルを呼ぶため、lait run --trace-fileの対象になるのはこの 経路だけです。チャット(lait "prompt")・lait agent run・lait test/lait evalは今のところ--trace-fileを持ちません(lait serve --mcp --trace-fileについては MCP サーバーとして公開するを参照)。 - コスト(金額)は記録されません。トークン数のみです。
lait trace show
$ lait trace show trace.jsonl # 人間向けの一覧
$ lait trace show --json trace.jsonl # パース済みの JSON 配列
$ lait trace show --operation execute_tool trace.jsonl # ツール呼び出しだけ
$ lait trace show --summary trace.jsonl # label ごとの集計
plan: chat=2 execute_tool=0 compact=0 total=100ms tokens(in=30 out=7)
tool 'tool__echo': chat=0 execute_tool=1 compact=0 total=5ms tokens(in=0 out=0)
| オプション | 説明 |
|---|---|
--json |
整形済みの JSON 配列として出力します(--summary と併用すると集計結果の JSON 配列)。 |
--operation <OP> |
operation が OP(chat/execute_tool/compact)のイベントだけを表示します。 |
--label <TEXT> |
label に TEXT を含むイベントだけを表示します(ステップ id やツール名で絞り込めます)。 |
--summary |
イベントを1件ずつ表示する代わりに、label ごとにイベント種別ごとの件数・合計所要時間・入出力トークン数の合計を、最初に現れた順に表示します。--operation/--label で絞り込んだ後のイベントが対象です。 |
--json を指定すると、各行をパースした TraceEvent の配列を整形済み JSON として出力します。
jq と組み合わせて機械的に検査する場合は、ファイルを直接読んでも構いません(--json は
lait 自身の目視確認向けの整形出力です)。
$ jq -s 'map(select(.operation == "execute_tool" and .attributes["lait.tool.decision"] == "denied"))' trace.jsonl
lait trace export(OTLP へのエクスポート)
lait trace export は、トレースファイルを OpenTelemetry の OTLP/HTTP(JSON エンコーディング)で
コレクターへ送信します。Jaeger・Grafana Tempo・Honeycomb など、OTLP を受け付ける任意のバック
エンドで実行軌跡を可視化できます。
$ lait trace export --otlp http://localhost:4318/v1/traces trace.jsonl
note: exported 3 spans to 'http://localhost:4318/v1/traces'
| オプション | 説明 |
|---|---|
--otlp <URL>(必須) |
送信先の OTLP/HTTP traces エンドポイント。指定した URL にそのまま POST します(/v1/traces などのパスも含めて指定してください)。 |
--header <NAME=VALUE> |
リクエストヘッダーを追加します(認証トークンなど)。複数指定できます。VALUE は ${VAR_NAME} で環境変数を参照できるため、秘密情報をコマンドラインに直接書かずに済みます。 |
--service-name <NAME> |
リソース属性 service.name の値。既定は lait です。 |
変換の規則は次のとおりです。
- 1イベントが1 span になります。上記のとおりイベントには親子関係がないため、すべての span は 同じ trace に属するルート span です。
- trace id と span id はトレースファイルの内容から決定的に導出します。同じファイルを2回 エクスポートしても、別の trace が重複して作られることはありません。
- span 名は
<operation> <label>(例:chat summarize)です。attributesはそのまま span の属性に なり、加えてgen_ai.operation.name・lait.label・lait.seqを付けます。配列やオブジェクトの 属性値は JSON 文字列として送ります。 - コレクターが 2xx 以外を返した場合は、ステータスと応答本文を含むエラーになります。