生成 AI を使った開発をするにあたって何冊か書物をあたっているので、感想と本の内容の紹介を簡単に紹介する。
読了
未読
- 実践 LLMアプリケーション開発 ―プロトタイプを脱却し、実用的な実装に迫るための包括的な手引き
- 直感 LLM ―ハンズオンで動かして学ぶ大規模言語モデル入門
- つくりながら学ぶ!LLM 自作入門
- 大規模言語モデル入門
- 大規模言語モデル入門Ⅱ〜生成型LLMの実装と評価
LLMのプロンプトエンジニアリング ―GitHub Copilotを生んだ開発者が教える生成AIアプリケーション開発
GitHub Copilot の開発に携わっていた人が書いた LLM についての本となっている。 OpenAI が開発した ChatGPT のようなチャット形式のアプリケーションが普及した後に LLM を使ったサービスとして広く普及したのは、 GitHub Copilot のようなコード補完を支援するアプリケーションだと思うが、本書を読むとコード生成のような分野と LLM は相性がいいということを改めて思った。
本で書かれていることの概要を書こうと思って読み直してみると目次がないことに気がついた。 Kindle 版で読んでいるからだろうか。
この本は後で紹介する『現場で活用するためのAIエージェント実践入門 (KS情報科学専門書)』と比較すると、生成 AI アプリケーションの具体的な開発方法というよりは、LLM 自体の歴史やこれまで発見されたテクニック、LLM を扱う上で知っておいた方がいい概念、考え方について書かれた本となっている。アプリケーションの設計についても触れられているが、フローチャートで書かれるような処理の流れといったレベルの設計に留まっており、具体的なアプリケーション開発について学べる類いのものではないと思う。この点は Amazon のレビューでも触れられていた。
また、原書は英語の『Prompt Engineering for Llms: The Art and Science of Building Large Language Model-Based Applications』となっており、英語版は 2024/12/31 に出版され、日本語訳である本書が出版されたのは 2025/5/16 と半年近く経過している。執筆から出版までを考えると、この本が書かれた当時の状況は 2024/12/31 よりも数ヶ月に基づいたものになっている。そのため、2024年11月頃に Anthropic が MCP (Model Context Protocol) を発表したが、本書ではその点については触れられていない。 MCP が発表されるよりも前から LLM によるツール利用の考えはあったため、ツールを利用するための話はされているが、そのプロトコルが現在においては標準化されていっていることについて書かれていないため、情報が古くなってしまっている。
一方で、LLM から望みの出力を得るために使えるテクニックや LLM の振舞いについて書かれている部分で学べることは多いため、 AI エージェントの具体的な開発方法について知ることを目的とするのではなく、LLM とその周辺技術について知るにはよい本だと思う。
現場で活用するためのAIエージェント実践入門 (KS情報科学専門書)
この本は『LLMのプロンプトエンジニアリング ―GitHub Copilotを生んだ開発者が教える生成AIアプリケーション開発』よりも具体的な実装について書かれているため、実際に LLM を用いたアプリケーション開発をしようとしている人にとっては欲しい情報を含んでいる可能性が高い。
本全体は三部構成となっており、
- 第1部では、AI エージェントを構成する技術的な内容について網羅的に知ることができる。
- 第2部では、OpenAI が提供する API についての説明と、本書を通して使われる LangGraph の簡単な解説、そして 4 つの具体的なユースケースとともにその実装方法について書かれている。
- 第3部では、実際に AI エージェントをサービス投入する場合に考えなければいけない事柄である評価、エーラ分析、リスク、モニタリングなどについて書かれている。
第1部では、AI エージェント開発において知っておかなければならない
- LLM
- プロフィール
- ツール呼び出し
- 計画
- 自己修正
- メモリ
- ワークフロー
について説明されている。
第2部では、実際に次の領域を題材に RAG やエージェントの設計、実装について解説されている。
- ヘルプデスク
- データ分析
- 情報収集
- マーケティング
第3部では、AI エージェントの評価、エラー分析、UX、リスク、モニタリング、精度改善といった市場投入に向けて避けられない要素について説明されている。
全体を通して AI エージェント開発の流れや構成要素をある程度網羅していると思う。コードを使った解説を伴うため LangGraph を使ったコードが出てくるが LLM を使うコード自体は難しいところはないのでどういった実装が必要になるのか雰囲気を掴むのに問題はない。
まとめ
具体的な AI エージェント開発について知りたい場合は『現場で活用するためのAIエージェント実践入門 (KS情報科学専門書)』を読んで、 AI エージェントというよりは LLM についての知識や歴史、LLM を使うときのテクニックについて知りたい場合は『LLMのプロンプトエンジニアリング ―GitHub Copilotを生んだ開発者が教える生成AIアプリケーション開発』が良いと思う。